大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 平成5年(行コ)7号 判決 1993年10月13日

控訴人(原告) 加藤元人

被控訴人(被告) 大治町長

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が原判決別紙物件目録記載二の土地について昭和六〇年三月三〇日付けでした道路供用開始処分が無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

二  被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

第二事案の概要

本件事案の概要は、当審における当事者双方の主張を次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決三頁五行目「同年」を「平成三年」と改める。

1  控訴人の主張

本件土地を含む本件道路には名古屋市水道局の上水道管と東邦瓦斯株式会社の都市ガス管が昭和四五年から敷設されているが、被控訴人はこれに対し道路占用を許可しており、将来これを更新継続することとなる。この占用許可と更新は本件道路供用開始処分の後続処分に当たる。控訴人はこの後続処分によって損害を受けるおそれがある。

2  被控訴人の主張

都市ガス管は本件道路の北側に敷設されており本件土地とは関係がない。上水道管の敷設されたのは本件道路供用開始処分より以前の昭和四五年のことである。この敷設は後続処分に当たらない。又このように既に敷設されてしまっているものとの関係では、損害は既に現実に発生しているというべきであるから、控訴人に後続処分により生ずべき損害の発生を未然に阻止するという予防利益はなく、控訴人としては現在の法律関係に関する訴えによってその排除等を求めれば足りるものである。

第三証拠関係<省略>

第四当裁判所の判断

一  当裁判所も、控訴人は、本件請求について行政事件訴訟法三六条の定める原告適格を有しないから、本件訴えを不適法として却下すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

原判決一〇頁四行目「である。」の次に「また、控訴人が当審で主張する上水道管及び都市ガス管の敷設についても、控訴人主張によっても本件処分より前に工事も終わり既に使用が開始されていることになるから、本件処分に続く処分により損害を受ける具体的なおそれがあるとはいえない。これらを敷設するための道路占用許可が更新されても、右の道路使用状況が継続するのみで、更新によって損害を受ける具体的なおそれがあるとはいえない。」を、同一一枚目六行目「二頁」の次に「、民集四六巻六号一〇九〇頁」を、同一二頁五行目「ができる。」の次に「控訴人が当審において主張する上水道管及び都市ガス管の敷設に関し何らかの請求をするについても同様に現在の法律関係に関する民事訴訟を提起することが可能であり、これによってその目的を達することができるというべきである。これらを敷設するための道路占用許可が更新されても、右のような民事訴訟によって目的を達しうる事態が継続するにとどまる。」を、同行「しかも、」の次に「いずれの場合も」をそれぞれ加える。

二  よって、控訴人の本件訴えを却下した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 横畠典夫 菅英昇 園部秀穗)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例